第1057話 ■モザイク
私のインターネット歴もかれこれ9年目になる。そのときのWindowsはバージョンが3.1でTCP/IPのプロトコルをインストールするにも別にソフトを買わなければならなかったし、そのインストール自体も専門的な用語が分からないと設定ができないような、それはそれはかなり面倒な時代だった。その後、Windows95が出て、TCP/IPのプロトコルはOSに含まれているし、設定も超簡単。「良い時代が来た」と本当に思った。
8年前の今頃には会社でWebサイトを立ち上げていた。自分でそのサイトを実際に作ったわけではないが、私がプロデュースし、言うがままに作ってもらった。それはまだ会社として公式のサイトを立ち上げる以前に、ある部署が独自にサイトを持っていたもので、「これを見た人が会社の公式ホームページだと誤解すると困る」と社内的にクレームを付けられたことがあったが、お構いなしにそのサイトは続いた。但し、私の異動により間もなくそのサイトはなくなった。
その異動からしばらくして、自分でもサイトを作るようになった。その頃には会社でも公式のホームページを持つようになったため、外部に公開するサイトを作るにはいろいろと審査がうるさくなり、面倒なので私の創作意欲は社内のイントラサイトへと移った。これは今も元気に動いている。その一方で個人的なコラムのサイトを立ち上げてからはもうすぐ4年になる。
さてさて、そんな私のインターネット初体験について語ろう。確か、ソフトバンクのセミナーだったと思う。話としては聞いたことがあった、インターネットという、そもそも軍事目的に作られたネットワークが全世界的に張り巡らされていて、外国の情報なんかにもすぐアクセスできる。パソコン通信と違って、画面に画像が出る。しかし、実物がどんなものかは見たことがなかった。いろいろと日本ではヤバイ画像も外国のサーバーにアクセスすれば見られる、なんて情報も耳にはしていた。
セミナーのプレゼンが一息ついたところで、プレゼンターが言う。「それではここで、話題のインターネットをモザイクを使って実際に見ていただきましょう」と。退屈なプレゼンの最中、その言葉で急に眠気が吹き飛んだ。「インターネット!!」、「モザイク??」。モザイクという言葉で思い浮かんだのはあの画像処理のモザイクしかない。そこにインターネット。外国のサーバーにアクセスして、画像も見れる。「(おいおい、昼間っからそんなもん、こんな大勢に見せていいのか?)」、「(やっぱり、ずばりはヤバイからモザイクかよ)」。
やがて、モデムの通信音がして通信が確立すると、プレゼンターはブラウザを起動し、「こちらがモザイクの新バージョンです」と言った。ここに来てようやく私はモザイクが何であるかを思い出した。それはブラウザソフトの名称であって、当時はネットスケープもインターネットエクスプローラーも存在せず、市場のブラウザソフトのほとんどはこのモザイクで占められていた。スクリーンにはモザイクの画像どころか、つまらないアルファベットの羅列がくっきりと投影されていた。私のインターネットの歴史はこんな勘違いとともに始まった。
(秀)
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