第1069話 ■辞表の値段

 現道路公団総裁の藤井氏の去就が世間で騒がれている。就任早々、石原国土交通相は藤井氏の更迭を表明し、早速それを具体化しようと動き出している。しかし、石原大臣がカメラの前で語っている姿はどうも芝居がかっている。その一方で藤井氏は恰好な天下りの元官僚として世論のターゲットにマスコミなどの手によって仕立てられているような。何よりもあの好好爺のような不敵な笑みがそう感じさせる。

 大臣は総裁に「辞表をもってこい」と言ったとか。それを拒む、総裁。辞表を出せば2,600万円の退職金が手に入るものの、解任されてしまえば、それはもらえない。よってその辞表の値段は2,600万円ということになる。おずおずと辞表を出してはそのまま悪役のままでの幕切れである。ことここに至った成り行きについてはさておき、2,600万円の受取を拒否してまでも自らの意思を曲げない態度にはちょっと注目したい。

 それにしても2,600万円というのは高いなあ。プライドの値段としてもそうだが、3年間勤務した退職金としても高すぎる。総裁として不適格と判断しての更迭ならば、石原大臣は辞職勧告などに留まらず、即解任の手続きをすべきだったのではなかろうか?。マスコミはもっとこの2,600万円を国民の痛みとして数値化して伝えて欲しい。例えば、首都高の通行車両4万3千台あまり、高速道路の建設費なら何メートル、といった具合に。

 ただ、勤め人として、これまでの勤務実態や貢献に対して支払われるべき退職金が、今の紙切れのやり取りでもらえたりもらえなかったりというのは、複雑な心境だ。退職金がもらえないというのはこれまでの勤務が全否定されているような気がするからだ。私なら金が欲しいのももちろんだが、自分がやってきたことに対するプライドがあるからこそ退職金をもらうために辞表を書くという選択もありだと思う。

(秀)