第1107話 ■又四郎行状記

 ここ最近の私のマイブームは時代劇である。「ラストサムライ」なんぞを見て、渡辺謙やトム・クルーズの芝居について、ああだこうだと論じているわけでない。山手樹一郎の時代小説にはまっているのだ。通勤時間のみならず、家に帰っても読んでいる。おかげで録り溜めたドラマなどの分がさばけない。ほとんどの人には馴染みのない名前だろうが、「桃太郎侍」の原作者と言えば多少その作風が想像できるだろうか?。

 痛快娯楽時代劇とでも言おうか。まあ、最後はお決まりの勧善懲悪の路線は間違いないが、テレビの尺に納まるような単調な展開ではなく、主人公には何度も危機が訪れ、読んでいる側がいろいろとやきもきするような展開で楽しませてくれる。山手作品の基本的なストーリーと登場人物を紹介するとなると、「又四郎行状記」がその典型だろう。

 主人公の又四郎は自らを素浪人と名乗っているが、その実、正体は松平家の三男坊の若君である。人助けをきっかけに自分が婿養子に行くはずの藩の御家騒動を聞きつけ、自らの正体を隠して乗り込んで行く話である。武芸に長けていて、いざとなればめっぽう強いが、刃傷沙汰は大嫌い。育ちのせいか、おっとりというか、のんびりとして、そして無邪気。今風に言えば、「天然」といった感じである。必ずしも二枚目というわけではないが女性に惚れられやすい。

 ちょっと調べてみたら、山手作品は当時(昭和2、30年代)60本以上も映画化されていた。配役を見ると、主人公の多くを当時の大所が演じていた。嵐寛寿郎、片岡千恵蔵、高田浩吉、市川雷蔵、里見浩太郎。絶版にならずに今も文庫本で取り寄せれば読めるのがうれしい。またいずれ時代劇ブームが来るとなれば、山手作品を復活してほしいものだ。

 蛇足ながら今、又四郎行状記をドラマ化するという前提で勝手にキャスティングを考えてみた。主人公の又四郎は堤真一。あまり格好良すぎてはならない。ぼーっとしたところも誰よりもうまく演じてくれそうだから。相手役は鈴木京香かな?。けどこの二人、付き合っていたけど破局しちゃったから共演は無理か?。

(秀)