第1108話 ■13歳のハローワーク

 本のタイトルである。2,600円と高額ながら、結構、今売れているらしい。わが家にもある。最初見かけたときは「ホームワーク(宿題)」かと思いきや、「職業安定所」であった。本の帯を見てみると、まず大きな文字で「好きで好きでしょうがないことを職業として考えてみませんか?」とある。そしてその上に「<いい学校を出て、いい会社に入れば安心>という時代は終わりました」と続く。

 今、労働力市場で起きていることはこれまでの学歴社会を徐々にではあるが、崩壊させてしまいそうなパワーを秘めている。歳を取るごとに自動的に基本給が増額されていた年功賃金を廃止する企業が増えてきた。実力主義の名の下、確かに年収が増える人もいるだろうが、大多数の中高年サラリーマンの給料を抑制させる仕組みである。例え良い大学を出て、良い会社に入っても成果を出さない限り給料は上がらない。

 この本は学歴や大企業偏重ではなく、真に自分の好きなことを職業とすべきであるという観点から世にある色々な職業を紹介している。脱学歴社会とも言うべきこの考えは今後徐々に広まって行くことだろう。しかし、多くの大人たちは自分たちも未体験なことであるため、そんな世代の子どもたちに的確な進路を指し示すことができないかもしれない。

 いずれ、今の13歳が本当に職選びをするとなったときにはこの本に紹介されている以外の職業も多数出てきているだろう。そして、彼らが就職する10年後は団塊の世代のほとんどが労働力市場を去る頃でもある。少子化のため、労働力そのものが不足しているわけだから、労働力市場ではもっと大きな変化が起きているかもしれない。とにかく、子ども達もその親達も未体験の環境をこれから迎えることになる。

(秀)