第1110話 ■ホームネットワークの可能性
ビデオハードディスクレコーダーは確かに便利なもので、ビデオテープ管理の煩わしさから解放される思いを勘案すれば、決して高いものではない。世間的はDVDレコーダーとして取り上げられる事が多いが、そのほとんどがハードディスクレコーダーを積んでいるだろうし、実際にはDVDよりもハードディスクの方の利用が格段に多いはず。
しかし、皮肉なことに、一つの便利がもたらされることで、また別の不便さが現れるし、より高度な要求も出て来るものだ。もはや各家庭(一人暮らしなどを除く)にテレビが一台という時代ではない。しかもそれぞれにビデオデッキが付いていたりする。これまではビデオテープを持って移動さえすれば好きな場所のテレビでそれを見ることができたが、ハードディスクレコーダーに録画したものだとこうはいかない。
見たい録画データをDVDにしてしまえば確かにデータの取り出しは可能だが、複数のビデオデッキを持っている家は相当数あるだろうが、DVDデッキ(再生機能のみでも可)を複数台持っている家はぐんと少なくなるだろう。それ以上に、このやり方では手間が掛かり過ぎて日常的に何度も何度も繰り返す作業としてはあまりにも現実的でない。
そこで、ネットワークというわけであろうが、それらしい商品がなかなか世に現れてこない。レコーダーを兼ねたホームビデオサーバーと各部屋のテレビに取り付けるコントロールボックス。こんな構成で、これらがネットワークで繋がれば、どの部屋のテレビでもハードディスクに収められたビデオを見ることができる。もちろん、無線LANが理想だ。
現状はパソコンを子機にネットワークでコンテンツを配信するDVD(もちろん、ハードディスク付)レコーダーがようやく出てきたぐらいだ。しかし、パソコンの画面で見るよりはテレビで見た方が使い勝手は良い。それはテレビ番組はパソコンではなく、やはりテレビで見た方が自然であるのと同じである。
ネットワークとはコンピュータのためのものだと思い込んでいたが、ホームネットワークという意味ではこのコンピュータらしさがかえって邪魔かもしれない。さもないと、ネットワークを使ったビデオシステムは限られた層にしか求められないままだ。そして次にはコンテンツを外に求めて、そのネットワークは伸びていくことになるだろう。レンタルビデオ屋もネットワークの中に入る。「貸出中」や返却に行く手間から解放されるわけだ。
(秀)
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