第1265話 ■THE有頂天ホテル

 映画「THE有頂天ホテル」をようやく見た。三谷幸喜監督・脚本とあって、公開前から話題性もあり、公開後も興業ランキングで上位にランクインしている作品である。結論から言おう。それほど大騒ぎするほどの作品ではない。面白いことは確かに面白いが、映画の質としてはそれほど高いとは言えない。あまりの前評判に期待しすぎていた点を割り引いてもだ。

 舞台は大晦日の高級ホテル。このホテルというのは多くの人が出合ってストーリーを展開させる上では使いやすい舞台だ。ここに集った人々の様々なストーリーが絡んでくる。しかしそのためにメインのストーリーと言うべきものがない。話に軸がない。これが私のこの映画に対する評価を厳しくしている第一の理由である。そして、登場人物とストーリーがごちゃごちゃとしながら最後の年越しパーティーを迎え、「終わり良ければ全て良し」というなし崩し的な感じでエンディングに至る。

 リアルタイムストーリーである。上映時間の135分はそのまま映画の中の135分の時間経過となる。途中に時間経過をはしょることをしない。この仕掛けは面白い。一方、話題の1シーン1カットの長まわしの撮影は1シーンそもそもが短く、それほど気になったり、意識したりする感じではない。登場人物の処理については意見が分かれるところだろう。結構な人数を登場させ、それらをなし崩し的ながらも最後にまとめてしまうのは三谷流のすごさであろうが、そもそも登場人物が多すぎることで、軸をなくしてしまっているのは確かだ。私的には登場人物は半分ぐらいで良かった気がする。ストーリーも絞った方が良かった。登場人物に不必要に特殊な設定にしてそのことがリアリティを薄めてしまっている。

(秀)