第1264話 ■物欲の楽しみ方

 物欲には起伏があり、波があり、ピークを過ぎて小康状態になれば落ち着くが、何かをきっかけにさらまた大きなうねりとなって襲って来たりする。かつては振り子にそれを例えたような(第1229話参照)。そんな心理的なメカニズムを何とか解明できないものかと悩んでいたりする。それさえ分かれば私の無駄遣いも減るだろうし、精神衛生上、平穏な日々を送れることだろうに。

 こんなことを考えるのはここ数日、薄型テレビを無性に買いたくなったからだ。かれこれ2年近くそのタイミングをうかがっているが値段が高かったり、技術的に途上であったりと何とか気持ちをセーブしてきたが、もうそろそろ良いかな?、と思ったところに店員から提示された金額に驚き、物欲に火がついた。値札の「更にお安くします」という言葉に引かれ、尋ねて返ってきた金額に一瞬耳を疑った。値札より10万円も安い。

 ポイントバックを考えると37インチプラズマテレビが1インチあたり五千円になる。気持ち的にはフルハイビジョンが欲しいものの、それは倍の金額でも買えない。まずは地上波デジタル放送の美しさと映画の迫力画面を自宅で楽しむことが目的であるため、とりあえずは及第点である。早速家人に相談すると案の定、「ダメ」の返事。まあ、これは毎度のことなのでひるむどころか逆に物欲は燃え盛る。

 一方でその価格が本当に安いものなのか気になってくる。「他店より1円でも高い場合はご相談ください」という近所の量販店にこの価格をぶつけてみたらどうだろうか、と欲が出てくる。物を買うのはその物を買った満足感もそうだが、妥当な価格で買えたことへの満足感も重要である。できれば少しでも安く買いたい。また、インターネットの価格比較サイトを見てみたり、そこの掲示板に書き込まれているユーザーの声なんかも検討の要素にしてみる。

 と、ここまで原稿を書いたところで、近くの量販店にそこでの値段を確認に行った。結果、そこでは高かった。最初の店が余程の破格値であったわけだ。だったらその最初の店で買ってしまえば良さそうだが、2年にも上る我慢が決着するにはちょっとあっさり過ぎる。他の機種との比較もまだまだ不十分。楽しめるだけ楽しまなければもったいない。

(秀)