第143話 ■ファミレスにて
- 1999.11.12
- コラム
たまにはファミレスに行ったりもする。もちろん家族揃って行く回数の方が多いが、一人で行くこともある。すると手持ち無沙汰から周りの人間観察を始めてしまう。自然と同じような構成の家族連れに目が行ってしまうことが多い。自分達もあんな感じなのかと思うと「ゾッ」とすることを、反面教師として観察を続ける。きっとこんな風景を目にしたことがあるだろう。もしなくてもその雰囲気を想像することは容易なはずだ。
4人連れの家族が店に入って来た。だいたい奥さんの方が先頭を歩いて来る。旦那が後から入ってくるのは自動車の鍵を締めて来るからという推測もできるが、後から入って来た冴えない親父の風体を見れば、そのせいでもないような気がする。そうなると、メニューを握って子供達に「何にするの?」と聞いているのは奥さんで、旦那は一人で黙々とページをあれこれとめくっている。決めるのも遅い。このとき、子供がおもむろに持って来たゲームボーイを始めてしまうことがある。ゲーム機からは目を離すこともなく、「ハンバーグ」。オーダーが済むと今度は下の子が上の子のゲームにちょっかいを出すか、持って来たマンガを読みだす。本は「名探偵コナン」の線だったりする。親父は寡黙に煙草を吸い出す。
こんな外食のどこが楽しいのだろうか?。別に楽しまなくても良いが、得をしたのは夕飯の準備と片付けから解放された奥さんだけである。「夕飯、何食べたい?」、「何でも良い」。けど何でも良いはずなどないのが現実だ。この煩わしさから解放された喜びの方が大きい人もいるだろう。この子供達はまさか、自宅の食卓で配膳前にゲームをしたりマンガを読んだりしているはずはないだろうに。ファミレスに来てまで自分の世界に入り込みたいほど何か不愉快なのだろうか?。こんな風景はかつてのデパートの大食堂で目にすることはなかった。「そんな奴はファミレスになんか来るな!」と自分はオーダーの後にせわしくキーボードを叩いている。
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