第1431話 ■銭湯とオリオン座

 立春を目前にして、東京でも雪が降って積もった。暦の通り、これで大寒の終わりとともにいくらかずつでも暖かくなっていって欲しいものだが、果たしてどうだろうか?。こんな寒い時期はやはり風呂が気持ち良い。ちょっと熱い感じの湯にじーっと浸かっているのが私は好きだ。

 私が中学生のときまで我が実家には風呂がなかったので、日々銭湯に通っていた。ところがこの寒い日の銭湯通いというのはちょっと気が滅入る。わずか50メートルほどの距離だが、寒いのでじっくりと着込んで行かないといけない。これが雨や雪となるとさらに面倒なことになる。

 それでも一旦銭湯に着いてしまうとその気は一転し、脱衣し、浴槽に入った時点で「極楽、極楽」となる。泉質は普通のお湯だが、気分は温泉のようなもんだ。大きな浴槽もあいまって、外風呂にはそんな楽しみがある。それに浴室に入った途端に暖かいのも内風呂とは違う。

 あがってしまえば、体がほかほかとしているので、帰り道もそれほど寒くない。凛とした空気の中、空を見上げるとそこにはオリオン座が輝いている。今ではスーパー銭湯の帰り、車に向かうまでのわずかな時間に垣間見る程でしかない。

 会社帰り、バスから降りて自宅までの道でふと見上げるとオリオン座。帰り着いての浴室は寒い。

(秀)