第1520話 ■笑ってはいけない観客

 私の予想ではもう早々に終わっているはずのお笑いブームがなかなか終わらずに続いている。いったい今回のブームはいつからだっただろうか?。もう思い出せないくらい長く続いているような気がする。「エンタの神様」ですらもう5年も放送している。制作サイドも次が考え付かず、お笑い芸人に頼っているのではなかろうか?。しかし、着実に全体のレベルは下がってきている。

 勢いが衰えるどころか、これまで不定期に放送されていたお笑い番組が週刊のレギュラー番組になったりもしている。「爆笑レッドカーペット」がその1つであり、「イロモネア」もまたその1つである。今回はこの後者を話題にしてみたい。

 「イロモネア」とはウッチャンナンチャンが司会で、ちょっとは名前と顔は知られている芸人が登場し、客席にいる観客からランダムに選ばれた5人を笑わせることで最終的に賞金100万円が獲得できる趣向の番組である。芸人にはモノマネ、一発芸、ショートコント、サイレント、モノボケの5つのお題があり、これを1つ目から4つ目までのお題については5人のうちの3人、最終ステージでは5人全員をそれぞれ1分間で笑わせればクリアとなる。

 会場にいる観客の中から誰がその回(お笑い芸人ごとに選択する)の審査員に選ばれたのかは司会者と番組をテレビで見ている人にしか分からない。観客に「笑わないように」との前説があるのだろうけど、画面に映される審査員の観客はみんな最初、むすっとしている。途中、面白くて笑い人ももちろんいるが、最初から最後まで全く笑わない人もいる。

 普通のお笑い番組では会場が笑いで溢れ、その勢いでテレビの視聴者も笑わせようと会場では異常なほどの盛り上げや合図を送ったりするものだが、この番組では全く逆である。笑いに対するアンチテーゼか?。いや、それほどのことではなかろう。笑っていけないので、会場の雰囲気は相当劣悪なものだと思う。そしてそんな中で芸をやらなければならない芸人のストレスも相当だろう。

 「笑い屋」なるお笑い番組を盛り上げる人がいると聞く。一方、その逆のプロも存在するかもしれない、とこの番組を見ていると思う。「笑わない屋」。そうそう賞金を取られないように笑わないことで雇われている人を観客の中に混ぜているのではないかと思う。いずれにせよ、お笑い番組なのに、笑わない観客の仏頂面を見るのが嫌なので、この番組を見ることはやめにした。

(秀)