第1587話 ■「時そば」で考える貨幣価値

 時代劇を見ていて、千両箱なんて出てくるけど、実際それって今ではいくらぐらいなんだ?、って思った事はないだろうか?。私は落語を聞くようになってから、噺に出てくる金額がとても気になっていた。今日はこのあたりをすっきりさせたい。

 せっかくなので落語で卑近なところとして、「時そば」を取り上げてみよう。江戸時代、そばは屋台で売りに来ていたらしい。そして値段は決まって16文。そばを食べ終わって代金を払う際に、小銭で8文まで払って、「今何時(なんどき)だい?」と尋ねる。そば屋は「九つ、です」と答える。そこで客は「10、11、12...」と続けて、1文ごまかす話である。これを見ていて真似した与太郎は、そもそもやる頃合を間違えて、8文まで払った後、時刻を尋ねるが、「四つ、です」と言われ、「5、6、7...」と損をするオチの噺だ。

 噺に出てくるところから、このそばは具材はちくわだけが入った、かけそばといったところだ。当時のそばが16文であった理由は諸説あるようだが、最も有名な説は、そば粉の比率が8割だった、二八そばで、その掛け算で2×8=16という話だ。1両は4000文だから、1両でそばが250杯が食べられる(そんな奴はいないだろうけど)。

 ここで現在のかけそばの値段を400円と仮定すると、1両が現在の貨幣価値では10万円ということになる。よって、千両とは1億円ということになる。ただ、実際に千両入った千両箱は20キロほどの重さがあって、鼠小僧が小脇に抱えて屋根伝いに逃げられるものでは到底ない。

 さてこれで皆さんも時代劇や落語で困らなくなったかな?。

(秀)