第1675話 ■ナイター寄席

 私は子供の頃、プロ野球のナイター中継が嫌いだった。当時我が家には1台のテレビしかなく、兄が連日それでプロ野球のナイター中継を見ていた。裏番組の見たいものが見られないから、プロ野球に恨みはないものの、ナイター中継は今でもあまり好きでない。ちょっと前までは、放送時間の延長で番組の録画予約がうまくいかなかったり(録画時間の延長は対応できても、他の局の番組と予約が連続しているとダメだったり)、といった影響もあって、迷惑すら感じていた。

 私が子供の頃のナイターは、当時ドーム球場などないから、新聞の番組欄に【雨天の場合】という但し書きが必ず載っていた。このような雨天用の番組を「雨傘番組」と呼んでいた。最初から雨ならばあらかじめ仕込んでおいた雨傘番組を放送すれば良いのだが、途中で雨が降り出して、試合が中断し、挙句の果てに試合が途中で終了してしまうケースがある。それでいて放送時間がまだたっぷり余っていたりする。時間の尺が合わないから、予定していた番組をここから流すわけにもいかない。

 一方、試合が順調に進みすぎて、放送時間をたっぷり残して試合が終了してしまうケースもある。普通はヒーローインタビューやハイライトシーンのビデオを何度も流して時間を埋めるのだろうが、それでも時間が余ってしまって間が持たないときもあったりした。先程の途中雨天のときもそうだが、時間調整のために臨時で編成され、放送されたのがナイター寄席である。「野球の試合が予定よりも早く終了しましたので、この後8時半からは『ナイター寄席』をお送りします」、なんてアナウンスが流れて、プロ野球中継が終わる。

 しばらくするとどこかの演芸場からの中継に番組が切り替わり、漫才なんかを演芸場から生中継で流していた。試合が早く終わりそうだと分かった途端にテレビ局のスタッフが急いで演芸場に機材を持ち込んで、放送していたのだろう。今思えば、そのあわただしさが想像するに面白い。

 そんな感じで、プロ野球のナイター中継に関する良い思い出は何一つないが、「ナイター寄席」のことは記憶に残っている。ただ、そんな頻繁にナイター寄席が放送される事はなく、私の記憶では2回あったまでしか覚えていない。

(秀)