第1699話 ■一眼国

 「猿の惑星」という映画をご存知の諸氏も多いことだろう。私の場合は小学生の時に第二次ブームとして周囲で話題になり、これを真似た子供向けの番組として、「猿の軍団」なる実写ドラマも放送されていた。さて、この話のあらすじは、宇宙飛行中にある惑星に不時着したところ、そこでは猿が人類を支配していた、というところから始まる。そしてその惑星はタイムスリップした未来の地球であるという皮肉が描かれている。

 当時はなかなかセンセーショナルは作品として迎えられたようだが、私は古典落語にこれに似た噺があることに先日気が付いた。「一眼国」という噺だ。見世物小屋の男が次なる何か新しい見世物はないかと探していると、別の見世物小屋の男がこんな話をしてくる。「江戸から北に百里程行ったところで、額に一つだけの目を持った少女を見たが、恐ろしくなって逃げてきた」と。

 この一つ目少女を捕まえて見世物小屋に出せば大儲けだと、早速この男は一つ目探しの旅に出る。聞いた通りの大きな原の榎の下で「おじさん、おじさん」と呼ぶ声がしてそれに振り向くと、一つ目の少女がいた。これを小脇に抱えて連れ去ろうとしたが、「キャー」と声を上げたからたまらない、周りから大人たちが現れて、たちまちこの男捕まってしまった。

 早速、奉行所に連れて行かれ、お裁きとなった。「その方、面を上げぃ」。お奉行の声に従って顔を上げると、お奉行も周りも皆、一つ目だった。「こいつは不思議だ、目が二つある。裁きは後だ、すぐに見世物小屋に連れて行け」となる。彼がやってきたのは、「猿の惑星」ならぬ、「一眼国」だったのだ。「猿の惑星」の原作者がこの古典落語のことを知っていたとは到底思えないが。

(秀)