第1770話 ■菅自滅

 昨日投開票が行われた参議院選挙の結果には正直驚いた。鳩山総理から菅総理への交代劇でV字回復したはずの支持率は毎週ごとに10ポイントは下げ、総理自ら定めた目標議席数を10も下回る結果と相成った。ここまでもの大幅敗北を予想できた人はおそらくいなかったのではなかろうか?。8時丁度に各テレビ局が発表した出口調査の結果に基づく民主党の獲得予想議席数は48というのがほとんどだったと思う。

 誰の目にも消費税率10%への増税発言が民主党敗因の最も大きなものに見える。同じことを自民党が言ったからと言って、与党と野党ではその真実味が大きく違う。どうしてあんなタイミングで菅総理は消費税を増税するといった発言をしたのであろうか?。少なくとも連立を組む国民新党との事前協議はなかったようだし、党内でも十分に検討を行った結果とは到底思えない。十分な準備が出来ていなかったから、次々に発言がブレたのに違いない。「殿ご乱心」といった感じか?。

 選挙民はある意味無責任である。その多くは増税を口にした政党や候補者には拒否反応を示す。建設的な財政再建策に基づくものであっても、増税と言うだけで拒否される。政治が不安定になろうとこの際関係ない。だからと言って、増税反対を言えば勝てるものでもない。

 金曜日の夕方、雨の秋葉原駅近く。民主党の宣伝カーから候補者本人なのか、応援者なのか分からないが演説を行っていた。「今回の選挙の争点は消費税ではありません。民主党が安定した政権運営ができるかどうかを判断いただく選挙です」と語っていた。詭弁である。逃げであり、論理のすり替えでしかない。ただ、前線での候補者としての本音なのかもしれない。党首が余計なことを言ったがために火消しに躍起にもなる。

 一人区を見てみると、自民党の21勝8敗。これが民主党の大敗を決定づけた。前回の総選挙で負けた自民党候補者が参議院選に鞍替して雪辱を果たした例も見られる。そういう意味で、民主党には選挙区ごとに衆参両方で勝ち続けられるような候補者の層がない。やはり小沢前幹事長の手腕がないと、特に小選挙区での選挙には勝てないようだ。次の総選挙までに小沢の復活がないとしたら、民主党は政権の座を失うことになるだろう。

 今回、思ったよりも芸能人候補が当選できずに良かった。結局彼らが当選したところで、何もできないであろうことが見透かされたのだろう。

 今回の選挙で最も謎だったのは、みんなの党の大躍進。いくつかの新党が出てきたがそれらと一線を画し、10人もの当選者を出した。しかも比例区だけでなく、選挙区でも当選を果たしている。決して有名人ではない。純粋に政策が評価されたのか?。基盤は?。一躍、彼らはキャスティングボートを手に入れた。

 さて、総理の責任論はどうなるのだろうか?。本来なら辞任すべき程の大敗である。ただ任期1ヶ月での辞任は国民への不信感になりかねないということで、党内でも責任論をうやむやにしてしまっている。次の顔がいないのも、党として非常に弱い。ここでもたつくとまた党への支持率低下にもなりかねない。残り2ヶ月の党代表の任期。ここで民主党は脱皮できるか?。

 ただ、衆議院選挙で民主党を勝たせたけれど、思ったほどその政治が良くなかったと感じた人が多かったのも事実であろう。

(秀)