第1769話 ■消費税率論議

 急遽、参議院選挙の争点として消費税の問題が浮上した。わざわざ選挙前に消費税率を上げることを公言して、支持率を落とす必要があるのか疑問だが、後から騙しうちを受けるよりは幾分ましか?  菅総理の発言がブレている。最初は消費税率を10%まで引き上げることを公約したかのように聞こえたが、その直後、公約の範囲は「10%での検討を各党に呼び掛ける」というところまでトーンダウンした。そしてここ数日は低所得者の場合は「還付」するとの話を持ち出してきたが、その対象額が、世帯年収で200万円~400万円くらいと、話す度に異なっているし、それぞれの年収で還付を行った場合の税収の試算があるのかどうか疑わしい。結構根拠もなく適当な数字を言っているだけのように聞こえる。

 それ以上に気になるのは、一体どうやって実際の還付を行うつもりなのかが分からない。1年間分のレシートを集めて確定申告をしろとでも言うのか?。そんな面倒なことを国民に強いるようでは総スカンを食らうことだろう。それに、これらに対応する事務員のコストを考えれば、現実性のない、これこそ絵に描いた餅である。

 そもそもなんで消費税率の値上げが必要なのか?。それは不況のせいもあって、税収が足りないことと、累積赤字の返済を多少なりとも進めていかないと国家財政が危機的状況を迎えるからである。そしてその借金はいつできたかと言うと、自民党政権時、具体的に言えば小渕政権下のときが最も顕著であった。あまりにも無責任な自民党。一方で法人税率の引き下げの話もあるようだ。「法人税率が高いと企業が海外に出て行ってしまう」との理由だが、この引き下げ分を消費税率の引き上げで補おうというのであれば許しがたい。

 「消費税率を上げる前にまずは支出の無駄をなくすのが先決」という意見も確かに正しいが、無駄な支出を事業仕分けで明らかにしたところで、必要な収入に比べると数字が2桁くらい足りない。いずれ消費税率を上げないと国家財政が破綻してしまうのは容易に想像できるが、それが具体的にいつになるのかには、誰も目をつぶっておきたい。いずれ大地震が来ると思っていても、それがどれほど間近に迫っているのかを思うのに似ている。

 消費税論議よりもまずは経済を浮揚させることが先決。ただ、その具体策をいずれの党も示せていない。「最小不幸社会」というネガティブなスローガンも国民のマインドを低下させている。こんなに夢のない選挙戦も珍しい。

(秀)