第203話 ■ユーミンの季節

 ユーミン=スキーミュージック、と考えている人にとっては旬を過ぎてしまっているかもしれないが、私にとってのユーミンの季節はこれからが本番である。勘の良い人はもうお気付きかと思うが、卒業シーズンがまさにユーミンの季節だと、私的には思うのだ。

 卒業式シーズンが近づくと「卒業写真」を思い出す人も多いことだろう。あの歌詞は学生時代を思い出して、胸がキュンとなる内容である。しかし、卒業写真というのは卒業式シーズンに頻繁に見開きするものではない。歌詞でも言っている、「悲しいことがあると・・・.」と。本当は季節感のない歌かもしれない。むしろ、盆や正月の方が同窓会の時期で、「悲しい」わけではないけど、卒アルを開く頻度は多いに違いない。曲のイメージは壊れてしまうけど。

 しかし、私がこれからがユーミンの季節と言う、本当の理由は「卒業写真」よりも「最後の春休み」という曲にある。この曲を初めて聞いたのは’83年3月1日の深夜のことである。なぜここまで細かく記憶しているかと言うと、この日はオールナイトニッポンが特別番組でその日のパーソナリティは薬師丸ひろ子だった。彼女は大学進学を控え、しばらく芸能活動を全面的に休止していたが、玉川大学への進学も決まり、高校を卒業したことで、芸能活動復帰の最初の仕事というふれこみであった。この頃が、今思えば彼女の人気の絶頂で、九州の田舎にいる高校生(私ではないよ)にも「俺も玉川大学に行く」と言わしめるほどであった。彼女が玉川大学を受けると分かると、志願者も一気に増えたと記憶している。

 彼女がその夜、どんな話をしたかまでは覚えていないが、午前3時を目前とした番組のエンディングで「一足先に私は春休みです。...最後にこの曲を聞いて下さい」と言って、「最後の春休み」が流れ、番組は二部に引き継がれた。「制服」という歌詞が出て来るし、これは明らかに高校時代を対象とした歌である。実際は高校で最後の春休みとなる率は小さいかもしれないが、曲のイメージとしてはやはり高校という設定でないといけない。この季節になると毎年この曲を聞きたくなる。かと言って、取り上げて話すほどの思い出が眠っているわけではない。春先はそんな気持ちになってしまう。不思議??。