第439話 ■変なじいさん 後編
- 2001.02.06
- コラム
【電車の中で会ったじいさんはますます壊れていった】
続いては小渕前総理が脳梗塞で亡くなったことに関して、「あの人は朝から晩までプッシュホンで電話を掛けていたそうですね。それで脳梗塞になったんですよ。プッシュホンっていうのは携帯電話のことでしょう?」と言う。もう笑うしかない。「プッシュホンというのは携帯電話ではないですよ」。そう答えると、じいさんの目は点になった。「お宅にも電話はあるでしょう?」。
前総理が「ブッチホン」として、さも電話好きのように報道されていたが、それは他の総理の場合、秘書官が電話を掛けて総理に取り次ぐのが普通であったところを彼の場合は自らが直接電話して来るところから話題になったに過ぎない。多少電話好きなのかもしれないが、一日中電話ばっかりしていては総理の仕事はいつやるんだ?。それに、電話や携帯電話が原因で脳梗塞が起こるようなら、皆さんの周りにも二、三人はそんな人がいてもおかしくないのがはなかろうか?。
相手にするのも呆れてしまっていたところに、電車は最寄り駅のホームへと滑り込んだ。やれやれ。ところがここからがさらに面白い。そのじいさんはポケットから新聞の切り抜きを取り出した。私が網棚からバッグを取り降ろしながら一瞥にしたその切り抜きには「携帯電話でウイルス」と見出しが付いていた。「それは違う。意味が違う」。そう言い残して電車を降りるしかなかった。この記事は携帯電話でもコンピュータウイルスに感染する可能性があることを説明した記事に違いない。しかし、そのじいさんは携帯電話を使用しているとウイルスに感染して病気になってしまうと思っているに違いない。
(秀)
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