第459話 ■ビター・スウィート・サンバ
- 2001.03.07
- コラム
午前一時というのは当時の私にとって未開の時間帯であった。しかも番組はそこから二時間も続くのである。中学校に進んだ頃にクラスの何人かは既に「オールナイトニッポン」を聞いていた。しかし、毎日というわけにはいかず、土曜日のみというスタイルだった。とりあえず私も土曜日(正しくは日が替って日曜日だけど)の深夜から挑戦することにした。当時の土曜日のパーソナリティは笑福亭鶴光であった。
時報とともに、鶴光の声が聞えて来た時にはちょっとうれしかった。やがて冒頭の喋りが終わり、番組タイトルをコールするとテーマミュージックが流れる。それが、ビター・スゥィート・サンバである。鶴光の番組の目玉コーナーは「おどろき桃の木びっくり話」と「おどろき桃の木ピンク話」という駄洒落の言葉遊びのコーナーであった。それから暫くして、他の曜日まで私の夜更かし癖は広まっていった。月曜日は中島みゆき、その後デーモン小暮、火曜日は所ジョージ、水曜日はタモリ、木曜日はビートたけし、そして金曜日はちょっと時代が下がって、ラジオっ娘、なんてのを聞いていた。
そのうち文明の利器を利用して、夜更かしなしで二時間の放送を聞く方法を獲得した。オートリバースヘッドのラジカセとオーディオタイマーの組み合わせである。タイマーで録音しながらも深夜放送は夜更かしの友としてイヤフォンを通じ、楽しいひとときを提供してくれた。一部が終わる三時近くになると不思議とテンションがハイになり、何だか眠るのが惜しくなったりもして、コンビニに自転車を走らせ、追加の夜食を買い出しに出かけたものである。
(秀)
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