第507話 ■こま遊び

 我が家では(と言っても、長男と私だけであるが)「こま」がちょっとしたブームである。木ゴマ、地球ゴマ、ベーゴマ、それに流行の「ベイブレード」(第461話参照)も外していない。そもそも今回のブームはベイブレードに始まった。ベイブレードとは、平たく言うと今風のベーゴマである。しかし、紐を巻いて回すような技量はいらず、アタッチメントを付けて、プラスティックのベルトを引っ張れば簡単に回すことができる。そして、このベイブレードはアニメの放送開始とともに大ブームとなった。

 こまと言うと、関東圏ではベーゴマのことを指すようだが、私の生まれ育った地方では木製で、支点のところ(「ケン」と呼んでいた)が鉄のものだった。直径約10センチ、駄菓子屋などで100円以下で買えた。それをだいたい誰もが3つ4つ持っており、自転車の前かごに入れて遊び場に集まってくる。遊び方はただ単純に長い間回っていたものが勝ちというルールだ。ベーゴマの様に限られたスペースで回すものではなく、地べた全体が競技場となるため、はじき出すことによる勝敗はないし、負けたからといって、そのこまが取られたりすることもない。1回終わる毎に、長く残った者から「テンイチ」、「テンニ」と順に称号が付き、最低は「テンドン」となる。続いて、前回負けた順にこまを回し始め、早く回した方が不利であるとともに、後から投げて回す(投げごまと呼んだ)者達の的にされたりする。

 小学3年生の時(昭和50年)にこま遊びが大ブームとなり、学校に持って行く程になった。当時の3年生の校舎は木造の校舎で、隣の棟は使用していない教室を教材置き場として利用していた。その教材置き場には、地図や標本のほかに大きなそろばんや定規、水で書く毛筆用の黒板(?)などが置いてあった。休み時間になると、この廊下でこま回しをやるのである。使用していない教室ばかりのため、チャイムが鳴らず、夢中のあまり授業に遅れ、何度となく怒られた(不思議と学校にこまを持ってきたことには寛大だった)。木造のため、廊下には無数の傷を残したが、その校舎も今はもうない。

(秀)