第506話 ■いとこ

 「いとこ」とは非常に微妙な関係である。何しろ、少なくとも片方の親同士は兄弟で、同じ祖父母を持つわけだ(例外の場合もあるだろうが、この際は目をつぶろう)。しかしながら、半分ほぼ同じような血統を持っていながらも、いとこ同士が公正や平等という環境下には必ずしもない。

 祖父さん祖母さんにとって、孫はいろいろあろうと、やはり内孫が最も可愛いようだ。やがて祖父さん名義の先祖代々の土地はおじさんを経て、いとこの物となる。かたや持つ者と持たざる者の階級(?)が再生産され、連綿と続く。そして、私は持たざる者の側にいる。

 また、いとこ同士は親同士の嫉妬心の代理戦争を演じさせられることになる。歳が近いとなると、学校での成績や進学先、はたまた就職先まで暗黙の中で競争させられていたりする。やがてその争いは嫁ぎ先、あるいは嫁さんの器量にまでおよぶ。子供の頃、親戚が集まる時にはいつもより良い格好をさせられていたのも、親同士の競争の一端だったとようやく思いが至るようになった。

 かつてはあれほど仲良く遊んでいたにも関わらず、どうしてこんな事態が起きるのだろうか?。それはやはり前述した、持てるものと持たざる者の再生産の嫉妬に始まり、やがて結婚により発生する親戚付合いの面倒くささからの疎遠であろう。結婚により発生する親戚は舅姑に次いで面倒なものである。

 やがて、結婚式や葬式の席で顔を会わせる程度となるが、そばにいたそれぞれの子供同士の歳が近かったりすると、微妙な関係は次の世代に引き継がれ、はとこ(=またいとこ)同士の暗黙の戦いの火ぶたが落とされることになる。ああ、悩ましい。

(秀)