第599話 ■ラジカセの話

 そもそも私の記憶に根付いている最も古いテレコはナショナルの「スナッピー」であった。フィンガー5がCMするカラフルなテレコである。ラジカセの話と言っておきながら、わざわざテレコと言い分けるのは、ラジオが確かなかったからだ。昭和48,9年のことだったと思う。もちろん、買ってもらえなかった。実際にラジカセを買ってもらったのは、小学4年生の時なので、スナッピーから2年後ということになる。もちろん、モノラルであった。

 かつて中高生にとって、ラジカセはステータスであった。家にはステレオ(システムコンポ)があっても、それが親や家族のものとなると、やはり自前のラジカセが欲しくなる。この頃、突如としてモノラルからステレオ化が進んだ。そして、もっと注目すべきは大型化である。スピーカーは直径20センチクラスになる。ダブルカセットになる。ノイズリダクション機能も付いて、もちろん、音も良くなった。しかし、値段も高くなってしまい、お年玉でもそう易々と手が届くものではなくなってしまう。だからステータスなのかもしれないが。

 こんな感じで各社が高性能なラジカセをリリースした。懐かしいので、メーカーと商品(ブランド)名を並べてみよう。ただ、どれも似たような顔つきをしていた。
 ・東芝:ボンビート
 ・SONY:ジルバップ
 ・SHARP:サーチャー
 ・パイオニア:ランナウェイ
 ・松下:(不明)

 高校の入学祝い(昭和57年)にボンビートを買ってもらった。本当はランナウェイが欲しかったが、どうしてもボンビートにしかない機能のために、これにした。それは「オートリバース」機能である。その後に一般化したこの機能もこの機種が最初であった。どうしてもこの機能が必要なわけはオールナイトニッポンである。オーディオタイマーとの組み合わせで、自分は夢の中にいながらも2時間まるまるの録音が可能となった。この文明の利器で夜更かしから解放された。

(秀)