第655話 ■今年の忠臣蔵

 気が付けば今年もこの日を迎えていた。12月14日。我がコラムの読者にはもうお馴染みの忠臣蔵、討ち入りの日である。今年は300年記念とアナウンスされていたが、それは江戸城松の廊下での刃傷事件から300年ということで、討ち入りからは299年である。それなら、3月14日の時点で「300年記念」と騒ぐのが筋だろう。

 彼らが討ち入った12月14日とは旧暦のことで、現在の暦に直すと1月29日頃らしい。1年で最も寒い時期である。そうなると、雪が深々と降り積もっていたのもリアルに思えてくる。現実では前日にかなりの量の雪が降って積もっていたようだが、その晩に雪は降っていない。当夜雪が降っていたと思うのは歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」でそう描かれているし、それ以降のフィクションの忠臣蔵がそれをお手本にしたからである。雪が降らないと観客の期待もおさまらない。「忠臣蔵」とはあくまでもフィクションの話。歴史的な観点からは「赤穂事件」というのが正しい。

 上京から十余年。ついにこの日に泉岳寺を訪れた。この日、泉岳寺では「義士祭」が行われている。文字通り祭りだ。たくさんの露店が沿道から並んでいる。多くの人でごった返している。まるで初詣や朝の通勤の駅のホームのようだ。夕方、銀座を出発した義士達の行進は6時に泉岳寺に着いた。今年の大石役は元巨人軍の中畑だった。討ち入った後に途中で寺坂吉右衛門が抜けるため、最終的に泉岳寺にたどり着くのは46人のはずだが行進してきた義士はどうも47人のようだ。しかし、見物客は誰もそんなこと気にしていない。逆に47人いないと変に思う人の方が多いことだろう。

 記念に沿道の土産物屋で義士のプラモデルを買う。写真はWebにて近日公開予定。そしてさっきまで「四十七人の刺客」をテレビで見ていた。299年目、こんな討ち入りの夜。

(秀)