第656話 ■エンドボール

 ポートボールをご存じの諸氏は多いことだろう。バスケットボールの低学年版とでも言うべきであろう。ゴールのリンクはない。ゴールには椅子に載ったゴールマンが控えており、そのゴールマンに味方からのボールが渡れば得点となる。ゴールマンとは地味な役目である。たまにボールがそれて、ボールをつかんでも椅子から落ちてしまっては得点にならない。それでブーイングが出ても困ってしまう。地味なだけでなく、損な役回りでもある。

 ゴール前にはゴールマンを邪魔するガードマンというのがいる。彼は攻撃に参加する事ができないばかりではなく、指定されたエリアから出ることも許されず、ゴールへのボールを邪魔するだけの仕事に終始する。ただ背が高いという理由だけで、ゴールマンやガードマンは決められてしまうこともしばしば。これまた悲しい。

 このポートボールは小学4年生で習う。これは今も昔も変わっていないようだ(我が親子の取材による)。ちなみに私の場合、小1ではころがしドッヂボール、小2では中当てドッヂボール、そして小3ではエンドボールを習った。我が子に聞いてみたが、これは知らないということだった。エンドボールとはポートボールの更なる簡易版である。コートの両エンドライン部分に幅2メートル程のエリアが設けられている。ゴールマン用の椅子などない。ゴールマンはそれぞれのチームに二人いて、このエリアを自由に動き回れる。

 ポートボール同様、エンドボールもゴールマンに味方からのボールが渡れば得点となる。エリア内を自由に動き回れる分、ポートボールのゴールマンよりもエンドボールのゴールマンの方がまだ良いかもしれないが、ゴールマンが地味な役所であるのはあまり変わりない。既に大人社会の縮図がその中にあったのかもしれない。

(秀)