第725話 ■家出人捜索番組

 別にそれを目的とした番組ではなく、それは番組の一コーナーに過ぎないが、敢えてこんなタイトルで失礼する。番組の名称は「アフタヌーン・ショウ」。正午からテレビ朝日(当時はNET?)系のネットで放送されていた。私が育った田舎では正午の放送の後にも3時から別のローカル局で再放送されていた。

 家出、特に不倫(もちろん、当時そんな呼び方はない)などで失踪した人の家族が出てきて、本人に呼びかけたり、視聴者からの情報を求めたりする。例えば、妻に逃げられた中年男性が出てくる。失踪した妻の写真がアップになり、「いつ頃いなくなったか?」、「一緒に失踪した(であろう)男性の情報」、「これまでに分かっている情報」などが紹介される。この夫婦に子供がいる場合には、その子供もスタジオに連れてこられる。学生服なんか着せられて。そして最後にはこれら家族がテレビの向こうにいるであろう妻・母親に宛て、カメラに向かって呼びかける。司会者(桂 小金治)は時に(まだ小さな)子供をダシに視聴者の情に訴えかけてくる。

 しかし、今思えばこれは相当怖い番組である。個人のプライバシーなんかあったもんじゃない。失踪した本人、それに家族。とりわけ子供達は学校でいじめられるのではなかろうか?。「お前この前学校休んだとき、テレビ出てたんだってな!」。極めつけは、失踪した女性の家族とその女性と一緒に失踪した(と思われる)男性の家族が一緒に出てくるときがある。

 番組で情報を受け付ける電話番号を紹介すると、視聴者からの情報が入りだす。「その失踪者をどこどこで見た」、「近所に住んでいる人に似ている」などなど。中には本人から電話が掛かってくるときもある。ところがこのコーナーは番組のエンディングで行われているため、有力と思われる情報が入りだしてスタジオが慌しくなり始めた途端、上手い具合に番組の放送時間が終わる。最終的に失踪者が探し出せたのかどうかは分からない場合が多い。そのもどかしさに子供ながらイライラした。3時からの放送を見てもそれはさっきの番組の再放送でしかないので、同じくもどかしさは残ったままであった。

(秀)