第734話 ■間違い電話

 間違い電話は妄想の世界である。特にそれが留守番電話だとしたら。留守番電話もその相手本人の声で応答してくれれば良いが、最近多いナレーターの音声メッセージだとすると間違って電話を掛けていても気が付かない。電話帳機能を使って掛けているのならともかく、初めて掛ける先の留守電にメッセージを残すのには時としてためらいを感じる。

 何故なら私のPHSの留守電に奇妙なメッセージが残っていたからである。相手はまさか掛け間違えていると微塵も思っていない。冒頭に相手を確認することなどなく、極めて事務的にビジネス話法で淡々とメッセージが残されていた。

 「○○カード(某クレジット会社)調査部の□□(電話をしてきた人の名前)です。××(本当に電話したかった相手、フルネームで女性だった)様よりご依頼のございましたご融資の件、ご希望の通り100万円でご用立てできました。そのお知らせでした」。概ねこんなメッセージが残されていた。慌ててもう一度メッセージを聞き直す。明らかに間違い電話である。

 それでも間違いついでに私の口座にその100万円が振り込まれないものかと待っている。妄想、妄想。

(秀)