第735話 ■クローンについて

 「クローン人間(を)妊娠」という報道がこのほどなされたが、この報道では分からないことが非常に多い。「アラブ系のお金持ち」のクローンらしいことも伝えられているが、仮にその男性が現在30歳だとしよう。やがて彼のクローン人間が誕生するとして、我々がイメージしていたまったく同じ人間ではなく、30歳の大人と赤ん坊を並べられて、「クローンです」と言われてもちょっとピンとこない。SFチックに、ある人の体細胞を培養し、大人であろうとそっくりの人間が登場するのとは違っているようだ。

 一見、この両者は親子にしか見えないだろう。その男性の小さいときにまさにそっくりな子供(赤ん坊)。クローンと言うからには指紋までもまったく同じなのだろうか?。たとえ同じ指紋や同じDNAを持っているにしても肝心の人格の部分については、出生後の環境に依存する部分が大きく、親子ほどの時代差があるとなると余計に同じ人格の人間などできっこないと思う。外見は似ていても太ったり痩せたりというのは体質以外に運動量なども影響するので、時差(年齢差)を勘案しても同じ人間ができるとは思えない。

 クローン反対派の人々の中に「フセインのクローン人間ができたら大変」などと言う人がいるが、その脅威はクローンであることとあまり関係ないように思える。クローンと言いながらも、もともとの生命体の生命が継承されるわけではないのだから。別に私は以上のような理由でクローン人間の誕生を許容しているわけではないが。

 一方、クローン人間誕生の技術は不妊治療にも効果があるらしい。男性が無精子であっても、母親の遺伝子だけを持った子供をクローン人間として誕生させられるわけである。この技術が一般化してしまうと、いずれ生命の継承に男性は不要になるかもしれない。

 それと出生時のクローンも怖い。受精卵の段階でクローン胚を作り、それをまた母胎に戻す。双子として生まれた一方がオリジナルで、もう一方はクローン人間。まさに究極の双子。何だかSFドラマの設定になってきた。

(秀)