第769話 ■日光写真

 雑誌の付録に付いてきたり、駄菓子屋でも売っていたような気がする。「日光写真」というから、機能にはまったく関係ないものの、箱にはカメラに見立てた印刷が施されていた。その絵も時代とともに新しいカメラのデザインへと変化してきているところがリアルだ。箱の中から、印画紙とネガを取り出す。ネガは1枚に20面分ぐらいが印刷されたシート状で、それをハサミで切らなければならない場合もある(雑誌の付録の場合はそうだったような)。ネガを種紙とも言っていたらしい。

 ネガは文字通り、白黒写真となるべき画像が白黒反転して印刷されていて、古くはパラフィン紙、後にセロファン系の素材に変わっていったと記憶している。図柄はアニメ系が多く、あまり細かな線などはない。また、濃淡も単調で中間調の表現は困難。よって、実写系の図柄はコントラストの関係上避けられる。

 図案は時代とともに変化する。かつては鞍馬天狗や赤胴鈴之助、それに忍者系といった時代劇ものがあった。その後は雑誌に連載されている漫画のキャラクター。きっとその単調な色調から、「のらくろ」なんていうのは絶好のキャラクターだったと思う。そして親切に、キャラクターの文字も入っていたりした。

 私は階段下の蛍光灯にこの日光写真機をかざして数を数えた。印画紙に焼付けられた画像を見るときはいつもドキドキした。こんな感じで、小学校低学年の頃までは身近にあって遊んでいたが、その後ぱったりと見かけなくなってしまった。昭和50年頃が境かと思う。銀塩写真でもそれまでの白黒からカラーが普及し、逆に白黒写真がほとんどなくなってしまった(実際には今でもあるが、今では趣味人が使うぐらい)頃ではないか?。また、家庭用テレビもカラーになり、これまた世の中から白黒が一掃された頃ではないか?。世の中がモノクロからカラーになるにつれ、日光写真が消えてしまったのではなかろうか?。

(秀)