第838話 ■エイベックスの敵

 音楽CD業界がかなり不況らしい。エイベックスは先日、連結で初の赤字見通しとなる旨の中間決算の業績予想を発表し、大幅に株価を下げてしまった。業界全体としてもこの前半期にはミリオンセラーが出なかったらしいが、私はそうそうミリオンセラーがいくつも出るようなご時世の方が不思議でたまらなかった。例えば、歌番組華やかな昭和の終わり頃、それは丁度、レコードからCDへの移行期なのだが、それ以前のミリオンセラーなんか、通算でもほんの数えるほどでしかなかった。アルバムのミリオンセラーなんかそれこそ夢物語である。

 ご承知のように、その後アイドルはいなくなり、テレビの歌番組もほとんどなくなってしまった。しかしそれにも関わらず、テレビ番組等とのタイアップのお陰で、CD業界はミリオンセラーを年間数枚ずつコンスタントに誕生させるに至った。注目すべきなのは、このような中、エイベックスは新興勢力の中心としてその力を拡大していったことだ。歌番組が消えたことは人々の音楽に対する嗜好が分散したためだとか言われているが、その一方でミリオンセラーは着実に生まれている。私にはこのことが不思議に思えてしょうがない。

 さて、エイベックスが先日の下方修正の会見で口にした、売上不振の理由の一つとして、「不正コピー」を挙げていた。不正コピーはゆゆしき問題である。しかしそれが大幅な売上減の原因とは言えそうにない。自らの責任を不正コピーに転化しているだけではなかろうか?。この場合の不正コピーとはデジタルデータとしてネットで流通させたり、CD−Rにそのままディスクコピーをしていることを指している。「不正コピー対策」を行うので今後は売上が好転すると話しているが、そんな輩が不正コピーがダメになったがためにオリジナルのディスクを買い求めるようになるとは到底思えない。レンタルショップに走って、MDへの録音に戻るだけだと思う。

 CD売上が減った原因は明らかに1つ。これまでCDを買っていた金が他に流れただけに過ぎない。その年齢層を考えると、携帯電話がその主なものであろう。携帯の使用料金が増えて、CDを買う金がなくなったというわけだ。楽しいことに金と時間を費やすのは当然のこと。その業界だけでシェアが上がった下がったと騒いでもしょうがない。もはやエイベックスの競争相手はドコモであり、auなどの携帯業界である。浜崎あゆみもTU−KAのCMに出たり、豹柄の携帯を作らせている場合ではない。いや、その当時、浜崎あゆみが宣伝してもドコモの独走を抑えることができなかった。こうして、あゆパワーが通用しなかった携帯業界。それがエイベックスやCD業界の最も大きな敵である。けど、そんなこと当事者も気が付いているだろうけど、そんな会見の場で言えるもんではない。

[おわび] 9月6日、メルマガにて配信いたしました内容に、事実誤認がありました。
このため、上記はマルマガにて配信した内容を一部書き改めたものです。

(秀)