第842話 ■おサルのエレベーター

 私が勤めている会社にあるエレベーターは相当おバカである。荷物用を除いて四台のエレベーターが設置されているが、高々12階までのビルのため、高層用・低層用といった区別はなく、四台のエレベーターがそれぞれ1階から12階までを往復している。

 そのバカさ加減であるが、まず1階から乗ったときにすぐには出発してくれない。「閉」のボタンを何度押そうともダメで、他のエレベーターが1階に戻って来るまで待たされることがほとんどだ。かと言って、必ずしもそうとも限らない場合もある。他のエレベーターが1階に戻って来ていなくても、1階に着いた直後に出発する場合もある。上の階で誰かが呼んだから?、と思えなくもないが、それだったらもっと上階にあるエレベーターを動かした方が効率が良いように思える。この効率の悪いエレベーターのせいで朝の就業前の時間帯は、1階のエレベーターホールが非常に混雑する。

 こんな具合で1階でズル休みしがちなエレベーターのため、これらは全て「(途中階から)呼んでもなかなか来ない」という現象に帰結する。途中階からエレベーターを呼んでも、1階に待機中のエレベーターがなかなか出発してくれないわけだ。それぞれのエレベーターが今どの階にいるのかが分かるのは1階だけとなっていて、途中階ではそれがわからないようになっている。しかも、「このエレベーターが来ます」といった予告通知機能もなく、突然(と言うか、ようやく)やってくる。そしてしばしば2台も3台も一遍にやってくる。

 こんな感じのエレベーターに対し、ある人が「このエレベーター、地下の制御室でサルが運転しているらしいですよ」と言って笑った。まさしく、その通りだ。サルが運転するとなると、そのボタンにはバナナやリンゴの絵が描かれているのだろうか?。朝、なかなか出発しないエレベーターの中、その絵を思い浮かべて、サルがバナナのボタンを早く押すように念じる。今度バナナを持って、地下の制御室のドアをノックしてみようかと思っている。

(秀)