第938話 ■トリビアの泉

 笑いとは微妙なものである。ときとして、くだらないものが面白かったり、馬鹿馬鹿しさがまた笑えたりする。そして何が面白いかは各自のセンスに大きく依存している。テレビの深夜番組というのはゴールデンタイムのように万人に受けるものではなく、それこそ睡眠との時間の兼ね合いで貴重な時間を費やしてまでもその番組を見るのかという葛藤がある。しかしそこには、くだらなさや馬鹿馬鹿しさ故に、ツボにはまってしまう番組がぽつぽつと存在していたりする。

 フジテレビの月曜深夜に「月深」という時間帯がある。30分番組×3本で構成されている。その最後の30分部分(25:40~26:10)に放送されている「トリビアの泉」という番組について話をしたい。トリビアとは「無用な知識」という意味で、このつまらない知識を紹介し、品評する番組である。「人間は『無用な知識=トリビア』の数が増えることで快感を感じることができる唯一の動物である(SF作家/アイザック・アシモフ)」という言葉がこの番組の基調になっている。

 司会(トリビアプレゼンター)は高橋克実(「ショムニ」の人事部長)と八嶋智人(三谷作品によく出る、小さい人。現在「美女か野獣」に出演)の二人。この人選の微妙さが既に私には面白い。下手な若手芸人でないところがうれしい。5人のパネラーに対して、司会の二人が視聴者からの投稿のネタを披露する。中身は番組のタイトル通り、無用な知識だ。その加減が微妙でなくてはならない。あまりにも無用過ぎたり、ごく限られた人しか知らないネタではいけない。

 ネタに対してパネラーは感心した度合いに応じて手元のスイッチを盛んに叩く。一人当たり20回までカウントされ、それぞれのネタは100点満点で評価される。この点数の単位は「へぇ」と呼ばれる。100へぇ満点で賞金は10万円。それ以外の場合は1へぇ当り100円となる。番組では投稿者からの内容を紹介しながら、その確認VTRを流すとともに、取材過程で明らかになった「補足トリビア」も合わせて紹介される。この「補足トリビア」も結構重要で、それでパネラーが笑いながらスイッチを叩きまくるときもある。

 そして毎回放送の中で最高へぇを獲得した人には賞品として「金の脳」のオブジェが贈られる。脳みその形をしたそのオブジェは中を開くと、これまた似た形のメロンパンが納められている。正体はメロンパン入れなのだ。私はこの馬鹿馬鹿しさが実に好きだ。この他にも高橋が最も個人的に気に入ったトリビアには特別賞として、「銀の脳」が贈られる。金よりは小振りで、これを5つ集めると金の脳と交換も可能だ。

 無用な知識を書き記すこのコラムも、この番組には驚いた。そのトリビアのいくつかを紹介してみよう。「『できるかな』のノッポさんはしゃべったことがある」、「小便少女もいる」、「(ゲゲゲの鬼太郎の)目玉のオヤジは目を閉じて寝る」、「石立鉄男の声だけを集めたCDがある」、「タモリとみのもんたは同じ誕生日である」、「パパイヤ鈴木は昔ディズニーランドで踊っていた」、などなど。まさに、「だから何なんだ?」の世界であるが、この加減が良い。かなりの深夜ゆえ、改めてビデオの有り難味に感謝。ところで、これまでの放送内容を紹介しているサイトがあるというのも笑える。検索エンジンで探してみれば。

(秀)