2003年9月

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第1055話 ■感じやすい女(4)

 何事もなかったかのように眠りつづける妻の横で、私はまんじりともできず、そうしていたら空が徐々に白んできていた。  一人で外に出てみると、あの地震の規模で余震がなかったのが不思議なくらいだが、周りは直後からはだいぶ静寂を取り戻していた。作り […]

第1054話 ■感じやすい女(3)

 「そんなバカな話があるもんか!」。  やはり周りの誰も私の話、もっともそれは妻の話を伝えているだけに過ぎないが、明日大地震が起きることなど信じてくれない。いつか大きな地震がやってくる。それは人間にはいつかは必ず死がやってくるのと同じくらい […]

第1053話 ■感じやすい女(2)

 その日、家に帰り着くと家の中の雰囲気が昨日までとは、いや、今朝出掛けたときと比べてちょっと異なっていた。別にこれと言って家具が増えたり、減ったりしているわけではない。よく見ると、棚の上に無造作に重ねられていたものが片付けられている。それだ […]

第1052話 ■感じやすい女(1)

 「ねえ、ちょっと今揺れてない?」  「えっ?」  妻が声を掛けてきて、二人でじっと部屋の蛍光灯の紐を睨んだ。  「揺れてないよ」。  そう答えた途端に、食器棚の方からカタカタを小さな音がしてきた。かと思うと、下から一撃、ドカンと突き上げる […]