第2038話 ■ある少年の疑問・マクロ経済編

 ちょっと好奇心の強い子どもの振りして言わせていただく。「お金って、どんな形をしているの?」って。決してこの子はバカじゃない。丸とか四角とか答えると大人でも返り討ちにあう。かつて、貨幣は金であり、金への交換を前提に、それに見合った兌換銀行券が発行されていた。しかし、それはもう昔のお話。「管理通貨制度」という言葉を学校で習った。

 「お金が足りないんなら、いっぱい刷れば良いじゃん。管理通貨制度だから」。「いや、けどそれじゃあ、インフレになっちゃうから。インフレってわかるかな?」。「うん、それも学校で習った。けど、どうしてインフレって駄目なの?」。軽微なインフレなら悪くない。むしろ、経済成長を目指す上では、若干のインフレは許容しないと、景気の好循環を作れない。

 「じゃあさー、国のお金ってどこにあるの?。日本銀行??。お札がいーっぱい積んであるの?」。少なくともそんなはずはない。民間にある金融資産もそうだ。何やら国内だけでも一千兆円規模であるらしい(池上さんがテレビで言っていた)。「ねえ、大きなお金ってどこに、どんな形で置いてあるの?」。このようないたいけな子どもの疑問にちゃんと答えられる大人がどれほどいるだろうか?。もちろん、私にもできない。できるくらいなら、学者か官僚か、解説員をやってるはずだから。

 さて、コロナウイルス騒ぎの補償について。給付金、協力金、支援金、貸付の保証諸々。お金が欲しい人がたくさんいるのは事実。「もっとくれ」と言いたいのもわかる。一方、国の借金が一千兆円以上あって、日々その利息で借金自体が膨れ上がっていることを皆知っている。ただ、実のところはどうなのだろうか?。財務大臣は「市中に金はある」と言って、最初は現金給付に難色を示した。だから市中に金があることは間違いないだろう。問題は様々な資産がどこにどのような形で存在していて、それがこの間の補償やこれからの経済活動に活用できるかどうか。マクロのレベルでこれらを論じることができる人が、そろそろ出てきても良さそうだが。

 「おじさん、ニューディール政策って知ってる?。世界恐慌のときに、アメリカがこの方法で、復活したって習ったよ」。もちろん、時間が経っているからそのまま真似するわけにはいかないだろう。「ねえボク。おじさん、うまく君の質問に答えきれないけど、もうちょっと頑張って考えてみるよ。大人の責任として」。

(秀)