第1016話 ■ドラママニュアル

 ドラマの良し悪しは決して視聴率などでは計れるものではないが、その業界では視聴率こそが正義であり、全てだったりする。そしてその成功は放送が始まる以前に話題性などで大体が推し量れるようになっている。まず第一にキャスティング。プロデューサーの手腕はまさにここに掛かっている。次がダメならその次、次の次、とアプローチを仕掛けて何とか出演を取り付けようとするが、悲しいかな、ようやく半年後に抑えることができた頃にはその俳優は既に下り坂かもしれない。何も俳優本人が悪いわけではない。露出のあまり、飽きられてしまったのだ。

 続いては脚本家、それに主題歌ではなかろうか?。主題歌については利用される側もタイアップとしてうれしい。この3要素を抑えさえして、いや、現実にはこの全てが揃うことは珍しいが、放送前から盛んにPRすればそれなりに高視聴率のドラマの一丁上がり。

 そこで重要なのはあまり奇をてらったことをやらないこと。キャストはその時点で既に視聴者側から見ればメッセージを発している。記号であったりする。鈴木京香が出ていれば、彼女はこれまで通り、我々の期待通りの設定で、期待通りの演技を見せてくれる。怒ったり、泣いたり。観月あずさもしかり、菅野美穂も、財前直見も、伊東美咲も。視聴者のイメージに乗っかって彼女達を動かした方が視聴者もストーリーを理解しやすい。

 これが中高年向けのドラマとなるとその傾向はますます顕著になる。サスペンス劇場など、新しい俳優はまず登場しない。視聴者が覚えられないから。もっと年齢が進むと、良い奴と悪い奴が一目瞭然である。時代劇などまさにそう。代官は悪者、出入りの商人も。ドラマには黄金律と言うか、マニュアルが存在し、それに従って日々生産され続けている。

(秀)