第1022話 ■フルーツカルピス

 お中元で貰ってうれしいものは果物の缶詰とカルピスだった。父親が酒を飲まないのでビールが届くことはなかったが、サラダ油なんか、大人は喜んでも子供には全くうれしくなかった。届けられた、と言っても当時は宅配便で届くのではなく、送り主がわざわざ持参するのが筋だったお中元は、仏壇の横に並べられていく。母親の実家となると、仏壇の横にお中元が山のように並び、見本市のようになる。貧相な物を持参してバツの悪い思いをするくらいなら、宅配便で送りつけてしまう気持ちも分からぬでもない。

 さておき、私の目当ては缶詰とカルピス。とりわけ、カルピスの大きな箱には心惹かれた。2本入りの場合はまず、ノーマルカルピスが2本。しかし、3本以上の詰め合わせになると、うち1本がフルーツカルピスとなる確率が高い。フルーツカルピス1本の場合はオレンジで、そして2本目がグレープだ。ビンの色はノーマルが茶色であるのに対して、フルーツカルピスは透明である。

 この有り難味はひとえに希少価値だろう。大して美味いわけでもなかったような。ただ、ノーマルカルピスを飲み終えた後の口の中に残る残留物が残らないところがうれしかった。たまにはまた飲みたい気がする。誰か送ってくれ。

(秀)