第1026話 ■森繁の夢

 休日の昼間、昼寝をしたら森繁久彌が夢の中に出てきた。彼は通りで誰かを待っている様子だった。彼は今、齢90を過ぎているが私が夢であった彼は40代頃の若い姿をしていて、それはきっと映像として私が知っている彼の最も若い姿だと思う。映像はモノクロだった。

 「あっ、森繁久彌だ!」と彼の姿に気が付くと、彼に近づき「森繁久彌さんですね」と私は声を掛けた。本人がいかにも自分が森繁久彌と言ったので、私は「『社長シリーズ』、私大好きなんです。面白いですね」と言った。私の意識の中で彼の存在が大きいせいか、彼の背丈は私が見上げるほど大きかった。「『社長シリーズ』?」。ところが相手に通じない。「映画ですよ、映画」、とここまで言って、彼の風貌から「社長シリーズ」をやる前の彼に会っているのだろうと判断した。

 森繁に会うこと自体そうだが、タイムスリップしていようと夢の世界なんで何でもありだ。それから先はどうなったかあいにく覚えていない。目が覚めると急に嫌な胸騒ぎがしてきた。「虫の知らせ」?!。不安になり、Webのニュースサイトを見てみた。どうやらまだ彼は無事なようだ。それにしても、目覚めの悪い夢だった。しかし数日は油断できない。逆夢であることを念じ、念のため書いておく。

(秀)