第1034話 ■デジタル万引き

 何とも嫌な響きの言葉だ。雑誌などのページを携帯電話で撮影してその雑誌を買わないことを誰が言い出したかデジタル万引きと呼び始めた。おいおい、それはちょっと乱暴すぎないか。デジ万、なんて省略形まで登場した。ちょっと別物のような雰囲気がする。万引きは窃盗である。例えば本屋の場合、その損失は本屋自身のものになる。一方、雑誌のページを撮影するというのは著作権法違反か?。ただ、撮影した箇所が紹介されている店の電話番号部分だけや求人広告の情報では著作物にならない可能性もある。この辺は極めて微妙な線だ。

 確かにその雑誌は売れなくなるだろうが、雑誌が無くなるわけでなく、直接的な本屋の被害とはならない。敢えて言うなら、機会損失ということだろう。基本的に本屋は売れ残った分を問屋に返本できるシステムなので、売れないからといって、不良在庫を抱える心配はない。最終的な被害は出版社へと転嫁される。だったら立ち読みはどうなんだ。これまで何故問題にしなかったんだ?。カメラ付き携帯が現れての被害なんか、これまでの立ち読みの累積に比べれば屁でもなかろうに。

 と、ここまでデジタル万引きを擁護するような話を展開してきたが、かと言って、私はそれを擁護する気などさらさらない。ただ、このデジタル万引きを取り上げるマスコミの態度が気に入らないのだ。彼らは、彼らというのは出版やテレビなどのマスコミ連合軍であるが、あたかも他人事のように、テレビが報道したりしているが、彼らに中立性などないにもかかわらず、マスコミとして中立を装い、報道の振りしてデジタル万引き追放キャンペーンを展開している。しかしよくよく考えると、自分たちの利益を守るために取り上げているような気がする。出版や新聞、放送局はお互い密接な関係にある。

 このような姑息な手を使うことなく、正々堂々と警告するなり、お願いするなりすれば良かろう。それとも雑誌を全てビニール袋に入れて自衛でもするか?。ただ、カメラで情報を盗み撮りすることが悪いことであることをわざわざ教えなければならない状況も憂うべきだ。

(秀)