第1037話 ■娘とビデオ
DVDレコーダーを購入してから、週末にちまちまとビデオからDVDへのメディアコンバートを進めている。結構時間がかかり、なかなか進まない。その間、DVDとビデオのデッキが両方とも使えなくなったしまうので、たまったビデオ(ビデオテープだけでなく、録画したもの全般という意味)を見るわけにもいかず(後から分かったが、DVDは録画中でもHDDは再生可能だった)、結構悩ましい。もちろん、ダビングしながら、そのテレビを終始眺めている気にもなれない。
それでもまあ、ちまちまとビデオの置き場所が片付くものならとダビングを続ける。何回見ても磨耗しないことと長期間の保存に耐えうること。この目的から優先順位を付けて対象を絞り込んでいく。子どもを撮影したものをDVDにコンバートしよう決めた。長女の生まれた日から誕生日、幼稚園でのお遊戯会や運動会などがある。日常を撮るようなことまではしなかったが、とりあえず主たるイベントのソースは揃っている。
何度も見たはずなのに結構忘れていることが多い。長女が年長組のお遊戯会のときに「はじめのことば」として挨拶をしていた。このことはすっかり忘れていた。いつものようにニヤニヤとした表情で壇上に現れ(「こいつ緊張していないのか??」)、聞き取りにくいが4人であわせて言葉を発し、それぞれが名前を名乗り壇を後にする。振り返ることもなく、スタスタと一番先に壇を去る娘の姿が見ていておかしかった。
この映像をあと何回ぐらい見るんだろうか?。まだダビングするソースのビデオは残っている。わずか7、8年前のことに過ぎないが、今の娘の姿を見て小さかった頃の姿を思い出すのは難しい。毎日見ているから。このDVDは嫁ぐときに持たせるんだろうな、と思ったり、きっと結婚が決まった日や嫁いで行った日にも(複製したディスクで)私は見ているかもしれない。意外にあっと言う間のことかも。
中学生となって微妙な難しい年頃に近づいている。私との会話を厭うようなところまでは行っていないが、妻とは背伸びしながらも対等に競り合おうとし、反発したりする。「お父さんから言ってやって」。妻のこの言葉で私の出番である。しかしこの日は昼間見たビデオのことがあり、頭ごなしに怒るでもなく、「お前も昔は言うことをきいて、いい子だったのになぁ」と言った。
一通り、ビデオを見て感じたことを伝え終えた途端、彼女は急にしくしくと泣き出した。そしてしばらくの後、黙って自分の部屋へと引き上げていった。私と妻はお互い顔を見合わせ首をひねる。幼い妹が親に甘えている姿を見て、自分もまだ甘えたいと思ったのか?。真実は分からない。けど、確認するでもない。翌日はケロっとしていた。難しい年頃。
(秀)
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