第1086話 ■中西圭三のネクタイ

 我が家の洋服ダンスの中に、私が「中西圭三のネクタイ」と名付けたネクタイがしまわれている。もう10年以上も前の話。ゴールドディスク大賞の模様を放送しているNHKの番組で、何らかの賞をもらったのであろう、Zooが「Choo Choo TRAIN」を歌っていた。1コーラス目が終わって2コーラス目が始まるとき、舞台の袖の方から一人の男がマイク片手に歌いながら登場した。

 その現れた男は「Choo Choo TRAIN」の作曲者の中西圭三であった。このときが私が中西圭三を初めて目撃した瞬間だった。そのときの彼のいでたちは紺のダブルのスーツに大きな花柄のネクタイであった。この曲が好きだったために、高い声で歌うこのときの彼の姿は私には非常に好印象に映った。そしてこの花柄のネクタイのインパクトは大きかった。

 それからしばらくの間、同じようなネクタイを探してみた。それと同じものは見つからないが、それらしいものは見つかった。非常に綺麗な柄のネクタイである。ところが、会う人、特に女性が私の顔でなく、最初にネクタイに目が行っているのが分かった。普通のサラリーマンが締めるにはちょっと浮いた感じがする。結局このネクタイを締めたのは5回ぐらいだったような。そして今となっては相当なキザ野郎かよっぽどセンスがおかしい人しかしないような時代遅れのものになってしまっているが捨てる決心がつかないまま時間が経ってしまっている。

 EXILEがこの曲をカバーして再びヒットしている。嬉しい。そしてこの曲を聴くたびに件のネクタイのことを思い出す。EXILEどころかZooの音源も手元にないので、セルフカバー、中西圭三の歌う「Choo Choo TRAIN」を聴きながら、今キーを叩いている。

(秀)