第1096話 ■取り付け騒ぎ

 私の故郷の地方銀行で取り付け騒ぎが起きた。今月26日にその銀行がつぶれるので、預けている人は明日中に全額下ろすことをお勧めします、という内容のメールが一部で出回り、瞬く間にそれがチェーンメールとなり、噂となって、25日にその銀行に人が押し寄せ、取り付け騒ぎになった。

 それほど報道されておらず、私もまたまた今朝の「やじうまワイド」でそのニュースを見たから知っているだけで、それを見ていなければ気が付かなかったかもしれない。とりあえず私にメールや電話で知らせてくれる地元の知人はいなかった。そのテレビで映し出されたドラマで見たような典型的な「取り付け騒ぎ」の図であった。

 例え銀行が破綻しようとも一千万円までの預金は全額保護されるはず。しかもテレビで見る行列の人々はそんなお金持ちには見えない。この25日は大半のサラリーマンの給料日だったことも騒ぎに拍車をかけたことだろう。年越しの金が気になったのかもしれない。あるいはもらったボーナスが気になったのかもしれない。いくら保護されようとも、目の前の現金なのであろう。

 ただ今回のこの騒ぎには伏線があったと思う。今年8月に佐賀商工共済協同組合が破産していた。有価証券の運用ミスを粉飾決算で隠蔽するなど悪質なもので、県の監督責任も問題になっている。被害者は4000人、負債総額は56億円を超えるとみられている。銀行ほどの規模ではなかろうが、預けていた金のほとんどが戻ってこない現実が狭い田舎では大きなニュースになっている。それだから人々は焦って銀行に行列をなしたような気がする。

 銀行は相手不詳のまま信用毀損罪で刑事告訴し、犯人探しにやっきになっている。このメールの最初の発信者をつきとめるため、メール受信者たちに「何時ごろ、誰から届いたか?」などの情報提供を呼びかけている。しかし、自分も加害者にされてしまうかもしれない状況で、果たして何人の人が捜査に協力するのやら。ましてや善意で知らせてくれた友人や知人を売るわけにはいかないだろう。もし私にこのメールが届いていたとしたら、きっとメールを転送していたり、ひょっとすると自分のホームページで注意を呼びかけていたかもしれない。届かなくって良かった。クワバラ、クワバラ。

(秀)