第1104話 ■新型クラウン

 何年振りのことだかは知らないが、トヨタのクラウンがフルモデルチェンジを行った。実車を間近で見たことはないがこれまでに比べるとかなりスポーティーな感じがするし、コンセプトもそのスタイルが示すように走りに重きを置いて開発されたようだ。これまでよりはかなり若向きに作られているような気がする。

 「いつかはクラウン」。まさにかつてこの車はゴールであった。トヨタのセダンには出世魚の如き商品ラインナップが用意されていて、平社員はカローラ、課長はコロナ、部長なったらにマークⅡで、そして社長はクラウンといったヒエラルキーが存在した。しかし、車種の多様化と最近になってはセダンの不調もあり、このパスはほとんど現存しなくなった。そして、かつてゴールだったクラウンも更に上にセルシオという上級車が登場してからは、ちょっと中途半端なポジションになった感じがある。

 ここ数年のトヨタのセダン群で私が思う残念なことはマークⅡの不作である。かつて、チェイサー、クレスタとの三つ子車の頃はクラウンまで手が届かない人々などをフォローする上で重要なポジションを占めていたし、三つ子車として各販売チャネルが競争し、売上も堅調であった。ところがチェイサー、クレスタの絶版のタイミングにあわせて、途端にやる気が感じられない車に成り下がっている。そして現モデルに至っては走っている姿を見ることも少ない。まずもってデザインがダメ過ぎる。色気がない。

 話を新型クラウンに戻そう。正直、今回のクラウンは私が好きなスタイルに仕上がっている。しかし、かつてゴールであったこのブランドをここまでスポーティーにしてしまって良いのか?、という疑問が生じる。クラウンらしさが希薄過ぎるのではなかろうか?。だったらいっそ、この新型クラウンはマークⅡという名前で売り出したほうが良かったのではないかという気がした。

(秀)