第1123話 ■祝辞思案中

 明日は小学校の卒業式。来賓として招かれ、祝辞を述べなければならないが、まだその原稿が出来ていない。それどころか、まだ書き出してもいない。コラムなんかそっちのけでそちらに掛かれば良いのだろうが、ウォーミングアップをいう事でコラムを先に書くことにしよう。

 式辞、送辞、答辞。たいそう大袈裟な紙包みから原稿を読み出す姿を見ることがある。あれはきちんと筆書きで書くものだろうか?。途中で書き損じたら、そこを塗りつぶして読みにくくなるだろうし、いちいち最初から書き直していたら、夜が明けてしまうだろう。それにあんな長い紙。お習字で使うやつだろうか?。プリンタを通らないのでやはり手書きするしかないのか?。あいにく私は筆できちんと自分で読めるほどの字を書ける自信がない。

 私も原稿は書くし、とりあえず紙には出す。もちろんパソコンとプリンタで。そしてポケットには忍ばせておく。しかし本番ではそれを取り出すことなく話すことにしている。結婚式の挨拶でも同様。それにはちょっとした理由がある。それは原稿を読み出すとひたすら読むしかないからだ。結婚式で当り障りにないことを話すとなると結構話が似通ってしまう。順番が後になるほどそのリスクは高くなる。

 明日の祝辞は来賓として三番目、最後である。「お父さん、お母さんへの感謝を忘れてはいけません」というのはかなりリスクが高い。これまでの経験によると、70%といった感じで重複してしまう。となると、思いっきり話がダブらないようなネタを用意するか、重複しても差し替えが利くように話をいくつか用意しておかねばならなくなる。そのどっちの作戦でいくかをまだ決めきれていないのが、書き出していない理由でもある。

 所詮三日もしないうち、いや、ほとんどの人はその日のうちに私が何を話したかなんて忘れてしまうであろう。気が楽といえば言えなくもない。さて、そろそろ始めるとするか。

(秀)