第1145話 ■深呼吸

 今日も会社の帰りに映画を見て帰った。明日が休み、という金曜日でもないのに、この日を選んだのは、今日が入場料千円の映画サービスデーであるためだった。

 さて、今日見た映画は「深呼吸の必要」。沖縄のある島でサトウキビ刈りをやる、七人の若者たちのストーリーである。東京ドームの三分の一の広さのサトウキビ畑を35日で刈らねばならない。ここに集う彼らはそれぞれに人言えぬような過去を持ち、その現実から逃げるため、また忘れようとしてこの地を訪れている。過去ある者たちが集まり、ある目的、ここではサトウキビを刈ること、のための淡々としたストーリー展開というのはかつての洋画の設定の雰囲気を感じる。ただ、それが何か、具体的なタイトルを挙げることはできないが。

 普通の映画やドラマならば、ここで登場人物それぞれの過去を絡めてストーリーが展開するパターンだろうが、この映画ではそれほどの執拗さがない。逆に一部の者についてはここにやって来た動機は分からないまま。若い複数の男女がいても恋愛話は起きない。携帯電話も出てこない(圏外か?)。彼らが過去を捨てることができたか?。それははっきりとは分からない。しかし、新たな環境、目的の中で得た達成感が彼らを変えたことは事実である。

 深呼吸すること。それは日常からのほんの一瞬の脱出だと私は理解した。日々の生活の中で深呼吸することの大切さを教えてもらった。仕事帰りに一杯やるよりも、こうして映画を見ることが私には深呼吸であることも認識した。日常を捨て、「サトウキビ刈りでも行ってみるか?!」という気分になる。さて、次はあの作品か?。

(秀)