第1197話 ■歌舞伎役者の息子

 そもそも中村七之助自身にニュースバリューがあるのかどうか大いに疑問である。中村七之助容疑者公務執行妨害で逮捕というニュースが今朝テレビやスポーツ新聞で大きく取り上げられていたが、それは本人自身のニュースバリューよりも、この日他に芸能やスポーツのニュースがなかったことに負うところが大きい。かなり過剰な取り上げ方だと思った。

 新聞の活字では七之助ではなく、勘九郎の文字の方が大きかった。所詮、勘九郎の息子としてのバリューである。かつてあった、川谷拓三の息子や三田佳子のそれと同じ感覚である。違う点は、七之助が芸能人として多少世間的に顔が知られていることだ。しかし、中村七之助の名前だけでは顔写真を出しても世間の認知度は低い。もし彼が今と同じような活躍で同じくらいの露出度だとしても、勘九郎の息子でなければこれほどのニュースにはならなかっただろう。これがもし市川海老蔵だったら、「市川団十郎の長男」と文字にはなろうが、団十郎よりも海老蔵の活字の方が大きいに違いない。

 「○○の息子(娘)」という言い方はどのあたりまで有効だろうか?。七之助が結婚したとしよう。「勘九郎の二男」と「中村七之助」のどっちの扱いが大きいだろうか?。皮肉にも彼は今回の事件で世間の認知度が上がったので、本人の名前の方を大きく扱ってくれる可能性が高まった。これが海老蔵なら間違いなく、本人の名前が前面に出るはず。海老蔵の場合は、市川団十郎の息子としてではなく、次期市川団十郎としてのバリューがある。

(秀)