第1205話 ■紅白餅

 私が小学生の頃、学校で年に数回、紅白餅が配られた。そのうちの一回は運動会の日に、そしてもう一回は三学期の終業式の日に。これに○周年記念などのお祝い事が加われば、その日にも配られる。中に黒餡の入った軟らかい餅である。白い紙袋に入れられ、袋には赤字で「祝」のスタンプが押されていた。配られるのは帰りの会のときで、何の指示もないものの、暗黙の了解として家に持ち帰って食べるものと認識されていた。

 ところが高学年になったあるとき(具体的にいつかは失念)、帰り道で友達が「(餅を)食べて帰ろうよ」と言った。確かこの日は給食がなかったため、腹も空いていたことだし、異論を挟むまでもなく合意すると、早速かばんから袋を取り出し、さらに中のビニール袋から餅を取り出して頬張り始めた。但し、誰かに見られて告げ口されるのは困るし、地域の人に見つかって、「行儀が悪い」と怒られたり、学校に通報されると困るので、ちょっと物陰に隠れてさっさと平らげた。

 それからしばらく経って、私はこのことを作文に書いて、皆の前で発表したことを記憶している。友達の実名入りで。この作文は非常にウケた。別にそれで先生に怒られることもなかったので、さらにエスカレートし、紅白餅は帰りの会終了後に学校で食べてから帰ることにした。それを見て仲間も増えた。

 巷では三学期の終業式の日である。かつての母校では今も紅白餅は配られているのだろうか?。子供をこの学校に通わせている地元の友人にメールを送って確認中。それにしても、うまかったなー、紅白餅。

(秀)