第1227話 ■読書感想文製造プログラム

 数ある夏休みの宿題の中で、その厄介さの筆頭に挙げられるのは、やはり読書感想文だろう。こればっかりは他人の答えを見せてもらうわけにもいかない。書く前にまず本を読まないといけないし、それにはその前に読むべき本を決めなければならない。読書の習慣がない人には本を決めることから既に面倒で、先送りしてしまう。そして、つくつくぼうしの声が聞こえる頃に慌ててしまう。

 読む気になったら、一気に読んでしまうのが良い。ただ、この読む気が重要で、読む気が起こるのを自然に待っていると夏は終わってしまう。それでもまあ、苦痛だけど読んでしまったとしよう。続いて感想文の執筆である。だいたい四百字詰め原稿用紙で五枚以内と相場が決まっている。しかし、五枚以内なら何枚でも良いと言うわけではなく、そこそこの評価を得るには四枚以上、さらには四枚半以上というが理想である。紙幅を埋めるために、あらすじや要約を書く人がいるが、基本的にこれは反則だ。

 「感想がないことはない」と先生に言われた。「つまんない」も確かに感想ではあるが、そんなもん文章にならないし、紙幅も埋まらない。それにつまんない感想文なんか書いていて余計につらい。そもそもどんなことを書けば良いのかが悩ましい。そんな息子のためにインターネットで探してみたら、質問に回答していく形で自動に読書感想文を作ってくれるフリーソフトウェアがあることを発見した。早速ダウンロードして、どんなものか試してみることにした。

 本の名前、主人公の名前、感想文を書きたい本人の性別、それに「この話の中で一番感動したところは?」、などの質問の答を決められたフィールドに入力していき、最後にボタンをクリックすると待望の感想文が自動的にできあがる。しかしできあがったのは、「この話の中で僕(男を指定したから)が一番感動したところは○○(入力した回答)です」という、質問と回答を単にくっつけただけで、質問と回答のまとまりが、また別の質問と回答のまとまりと接続詞でつないだだけの文章が画面に表示された。

 これでは文章の出来として、不十分だ。それに紙幅が埋まらないし、接続詞の使い方も不自然である。所詮こんなもんと諦めて、宿題は本気でやらねばならない。宿題に王道なしか。

(秀)