第1235話 ■共同出版というビジネス

 先日、自費での少量のコラム本発行を宣言した。本当ならば、どこかの出版社で出版してくれ、本屋に並び、ついでに印税が入ってくる、というのが理想であるが、世の中そううまい具合にはできていない。新聞やホームページなどで「企画出版(自己負担なし)」の原稿を募集している出版社があるが、そこから企画出版の栄光を勝ち取るのは非常に狭き門だ。また、どんなに優れた作品でも商業的に見込みがないものは企画出版として採用されない。出版社や本の種類にもよるが、そのハードルは5,000部~1万部と言われている。私も原稿をいくつかの出版社に送ったが、出版不況もあってか、「この手の本は売れない」とはっきり言われた。

 そこで企画出版に漏れたものの、出版社が「共同出版(出版社によって「協力出版」、「共創出版」などと名称が異なる)」を提案する場合がある。本の質や書店で購入できる点は企画出版と同じ(実際に並ぶ書店の数や宣伝の力の入れようは異なるだろうが)だし、売上に応じた印税も支払われる。しかし、この場合の著者負担金が発行部数1,000部で約200万円。自費出版の場合も大手の出版社では同程度の金額になるが、後者の場合、本の所有権は著者にある一方、前者の場合は出版社のものだ。

 共同と言いながら、そのリスクは著者のみで負担し、出版社はリスクどころか利益も含めた回収までする仕組みのようだ。穿った見方をすると、「企画出版」を看板に「共同出版」で確実な利益を回収しようという出版社も存在するはず。ここで運良く共同出版による1,000部が完売したところで、戻ってくる印税は最初の負担金の10分の1程度にしかならない。増刷分からは出版社の全額費用負担になるケースが多いようだが、1万部売れてようやく負担分が回収できるだけだ。そもそもそこまで売れるのなら、最初から企画出版ものだ。

 私の場合、大量の発行を希望するものではなく、そもそもそんな大金もない。ならばそれなりにとインターネットで検索し、思考を重ねた結果が自費出版・自前販売であった。赤字にならない程度の記念といった思いもある。まあ、そんな楽しみに一人でも多くの人に付き合っていただきたいと願ってやまない。

(秀)