第711話 ■トランスコンチネンツ・ミニッツリピーター

 「あれも欲しい、これも欲しい、もっと欲しい、もっともっと欲しい」。ドラマ「人にやさしく」のテーマ曲、ブルーハーツの「夢」の歌詞に従い、私の物欲は日々拡大していく。もちろん尽きることはない。

 また時計を買ってしまった。当コラムでも、時計に関する話は何度か書いてきた。ついにあの、ブルガリアルミニウムを買ったのか?(第113話参照)。いやいやそうではない。あれだけブルガリアルミニウムについて書いておきながら、またしても別の時計を買った。確かにアルミニウムも欲しい時計ではあるが、高いし、それでいていつでも買える。休みの最後になって宿題を片付けるような私にとって、そんないつでも買える時計など急いで買う必要などない。

 「トランスコンチネンツ・ミニッツリピーター」。これが今回購入した時計の名前である。ミニッツリピーターとして、電子音ながら「ハンマー音」で時刻を知らせる機能や永久カレンダーが付いている。私は実にこんな特殊機能を持った複雑時計に弱い。電波時計(第127話)もグランドコンプリケーション(第536話)もそうだった。おまけに限定発売、販売終了となると、物欲の条件は完璧に揃っている。ここ数ヶ月探し求め、やっとネットオークションで入手できた。4万5千円というのは、思ったよりも安かった。

 私の物欲は「今買うべきもの」に大きくなびく。満足度は決して金額に比例してはいない。もし私がブルガリやローレックス(のそれぞれ現行モデル)などに食指を動かすようになったら、私の物欲は最終局面だろう。そのときまで、この時計が時を刻んでくれることを望む。

(秀)