第1244話 ■アルファード

 もし今、車を買うとしたら、迷わずトヨタのアルファードを選ぶ。ジャンレノがCMしている大型ミニバン車である。後部座席ながら足を伸ばして広々と乗れるところが良い。家人に運転させて、私は後部座席で足を放り出してふんぞり返りたい。しかし、ただそれだけの理由で300万円もする車をいくら私でも衝動買いするわけにはいかない。

 それでもやはり気になるため、ディーラーに行って、後部座席でふんぞり返ったり、運転席に座ってみたりもしている。4歳の次女はディーラーが大好きで休みの度に「アルファード行こう、アルファード行こう」と私をせかす。最近のディーラーは子供が遊べるスペースがあって、お土産にお菓子やプレゼントがもらえるからであり、彼女はアルファードにはほとんど興味がない。

 私の近所でアルファードを扱っているディーラーは3社、5営業所ある。全部行って、見積もりを作ってもらうなどの、一通りの商談を済ませ、「検討してきます」と言って帰っている。欲しい気持ちはあるが先立つものがない。買えないのに何度もディーラーに通うわけには行かず、ついに行けるディーラーがなくなってしまった。娘の「アルファード行こう、アルファード行こう」という誘いに、行けない理由をまともに答えることができない状態である。

 私の場合、本当に欲しいものであれば、三日と待たずに買ってしまっている。支払いなどについては買ってしまってから悩むことにしている。アルファードは非常に良い車であるが、買ってしまうとそれが人生の頂点となって、後は下り坂という感じになりそうなことが心理的なブレーキになっている。それと外観のデザインがどうも都会的でない。無骨で精悍さに欠け、ゴテゴテしすぎている。まあ、そこが良いのだろうが、田舎の成金親父が好みそうな感じだ。だったら成金親父になったときに買うとしよう。

(秀)