第1269話 ■オークション詐欺と戦う

 ヤフオクで見つけた腕時計が欲しくなって、早速入札した。金額は1万円。しかし、しばらくして高値更新されてしまった。そこで今度は4万円で入札した。私の場合、終了間際の競り合いではなく、最初に限度額を決めて入札し、それが高値更新されたらそこで諦めることにしている。そしてこの4万円も終了数日前の時点で高値更新されてしまった。更に高額で入札しようかどうか随分迷ったが、結局この腕時計は見送ることにして放置しておいた。

 ところがオークション終了後、私が落札した旨のメールがヤフオクから届いた。落札金額は4万円。途端に嬉しくなったが、状況が分からない。どうやらオークション終了前に最高額入札者の入札がキャンセルされたらしい。そのため次点の私が最高額入札者となり、オークション終了を迎え、落札したようだ。早速、出品者からメールが届いたので事態を確認したところ、出品者もそのように回答してきた。

 普通だったらこれで4万円で落札できたのだから、めでたしめでたしだろうが、入札履歴の詳細を見ると不自然な点がある。上位者の入札がキャンセルされたのはオークション終了直前の2分前。この時点で私が最高額入札者になったが、この場合の金額は更なる次の順位の入札者の額をわずかに上回るところまで下げられる。具体的には私の次の人の入札額が2万円であったため、その瞬間、私の金額は2万500円になったはず。ところが、2分前のキャンセル直後、ある人が39,500円まで入札をしている。このある人を以下、Aとして話をしよう。

 キャンセル直後にこのAが39,500円まで入札しているのが不自然なのだ。そこでAについて調査を行った。出品しているものがあったので、その内容を見ると、今回の出品者と商品説明のフォーマットが全く同じで文章の表現も極めて似ていた。そして極めつけはAが出品している商品の写真と出品者が他に出品している商品の写真で背景に同じ模様のクロスが使用されていた。それも結構複雑な模様のもの。ここからは推測であるが、Aと出品者は同じ人物または家族で、Aは一旦下がった金額を吊り上げるために偽装の入札をした。しかも、私の限度額は私が次点になった時点で分かっているため、その4万円にするため、39,500円という半端な額で入札した。

 出品者に以上の私の推測を伝え、不正がなければ落札できた20,500円での商品の引渡しを求めた。しかし出品者は同一のクロスが写真に写っていた点について「偶然だと思います」と答えたり、出品ページの内容が似ている点についても「あるページからコピーして、同じようなものは簡単に作れます」ととぼけている。しかし、出品者に推測をメールで伝えた直後、Aがそれまで出品を一旦取り消し、商品の写真の背景を変え、説明のフォーマットも変えて再出品した。私が連絡したのは出品者に対してであり、Aに対しては連絡などしていない。この行動もAが出品者と同一人物であることの状況証拠となった。

 私の推測が正しいとすると、明らかにこれは詐欺行為である。金銭的被害を受けていないが詐欺未遂にはなりえる。そこで「ヤフオクに問い合わせ、不正が確認できたら詐欺未遂で警察に通報します」とメールで出品者に伝えると、「警察に通報されても問題ありませんのでどうぞ」と回答してきた。さらに私が落札した腕時計を一方的に再度出品した。そこで私は推測の部分をヤフオクの事務局に連絡して調査を依頼した。特に出品物の写真に同じクロスが写っている部分は具体的なオークションIDも付記して報告した。

 自信はあるものの、日々たくさんのトラブルを抱えているだろうから、ヤフオクが早々対応してくれるとはあまり期待していなかった。しかし、調査依頼の翌日(約半日後)には申請を受領し、調査を開始する旨のメールが届いた。ただ、調査結果の具体的な回答は行わないという事だった。そして受領メール受信の翌日、出品者とAのIDが「停止中」になった、出品が取り消されているのが確認できた。私の推測が正しく、不正な吊り上げが認められたのであろう。ざまあみろ。当初高値更新し、直前で入札キャンセルとなった人物についても出品フォーマットが同じであったため、同一人物とにらんでヤフオクに調査を頼んだが、こいつのIDはとりあえず生きている。

 一人で複数のIDを使用し、自分の出品物を価格を吊り上げようとすることは結構茶飯事らしい。今回もオークション終了直前にやられていなければ、不自然な点も気にならず、不正は見抜けなかっただろう。それどころか、最後にもうちょっと入札金額を上積みしようか随分迷った。もしこれで競り勝った形で落札していたら不正は見抜けなかっただろう。それにしても今回の不正はお粗末と言うか、稚拙だった。写真のクロスという明確な証拠があったから良かったものの、皆さんもお気を付けあれ。

(秀)