第1270話 ■森繁社長シリーズ

 今回は古い日本映画について蘊蓄を少々。私は日本映画が好きだが、そのバックボーンは昭和30、40年代の世の中も映画界も非常に元気だった頃の邦画の面白さにある。とりわけその中でも森繁久弥の社長シリーズ、喜劇駅前シリーズ、それにクレージー映画のシリーズが好きであるし、これらの作品の一部はスカパーやDVDで今も比較的簡単に視聴できる点も良い。

 その中で森繁の社長シリーズについて。以前はテレビの地上波でも放送されていて、それを見たのが最初だと思う。作品の数も多いため、自分なりに整理をしてみたら、基本的に正編と続編の2本構成で16タイトル、30本の映画が存在していた。これ以外にも同じ東宝作品で森繁が社長や重役を演じた作品は数タイトルあるが、私は「社長」というタイトルにこだわってこの数を確定した。

 この中で自分がいくつのビデオ(DVD)ソースを持っているかを確認したところ、自分でも驚くことに29本もあった。ただ一つ、初期作品の「おしゃべり社長」だけがない。インターネットで調べてみたら、配役やあらすじを公開しているページにたどり着いたが、そのあらすじを見る限り、これまでに一度も見たことがなさそうだ。DVDにもならず、スカパーでも放送された記憶もない。まさに私にとっては幻の作品と言える。

 基本的な配役のフォーマットは森繁社長に久慈あさみの妻、小林桂樹の秘書(秘書課長)、加東大助の重役、三木のり平の部長クラス。これにフランキー堺がたまに変な日系外国人として登場する。この他の女性陣としては淡路恵子、池内淳子、草笛光子あたりがバーのママや芸者として森繁の浮気の相手として絡んでくるが、この浮気は必ず未遂に終わる。後期は三木のり平が出なくなったり、秘書役が黒沢年男に変わってしまい、この頃から役者間の微妙な絡みという楽しみが大きく減ってしまう。

 そもそもこの社長シリーズは「三等重役」、「続三等重役」に端を発している。この作品は戦後の公職追放で期せずして棚ボタ式に社長に繰上げされた三等(一等は創業者、二等はその後継者)重役の話である。社長を河村黎吉が演じ、森繁は人事部長という役どころだった。この作品が好評でシリーズ化しようとした際に河村黎吉が死亡してしまい、森繁が社長に繰り上がってのシリーズ化とあいなった。ちなみに社長シリーズで社長室に掲げられている先代社長の写真はこの河村黎吉である。

 今回、これらの30作品をまとめてみようと思ったのは配役やストーリーがほぼ同一で後からどの作品がどうだったのかとか、あのシーン、あのストーリー展開はどの作品だったかが混乱してしまうからだ。そこで、会社の名前、業種、役者の役名、役職、ロケ地、浮気(未遂)の相手などを作品別にまとめることにした。実はクレージー映画も30本あり、これにはまとめた解説本が存在し、映画を見る上でなかなか便利である。このような本が社長シリーズにも存在しないかと探してみたがあいにくないようだ。インターネットでもそれほど踏み込んだ社長シリーズの解説サイトは存在していない。ないなら自分で作るしかない。ましてや好きなものだし。

 というわけで先週末には3タイトル、5本をメモを取りながら真剣に視聴した。なかなか面白く、良い感じ。成果はいずれお披露目したい。

(秀)